第29章

このプロジェクトは難しい。世界では毎年およそ800万人の新生児が重い遺伝性疾患を抱えて生まれてくるのに、その多くは生後数か月、あるいは数年経ってからようやく発見され、最善の介入時期を逃してしまう。

難しさの理由は単純だ。遺伝性疾患は7000種類以上。従来の検査は手間も時間もかかり、費用も高すぎる。

けれど――成功すれば。

早期スクリーニングで、90%以上の重度障害化を防げる。家族と社会の負担は軽くなる。何より、このプロジェクトの責任者である大島莉理は、世界に名を轟かせる。

「……だが、お前が失敗したら」

田中辰哉が言い切らなかった先を、莉理は理解していた。

要するに、ただの大博打...

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